第二十章 なんでも
その日から……サムさんは「ロナウド」と毎日真剣な喧嘩をしている。泣きそうになりながら、頑張ってやめさせようとしても、全然聞いてくれない。そのアカウントの持ち主を知ろうとしたサムさんは、SNSの会社の社長にまで情報を求めるメールを送っていた。もちろん……たとえそれがタイ政府だったとしても、メールを社長に直接送るなんて簡単にできることじゃない。サムさんって一体、何者……?
私にとっては、相変わらずただの友達のレディ・モイだけど。
サムさんがこの事件でストレスを溜めている最中、もう一人、つまりこの会社のオーナーでサムさんの婚約者である「ロナウド」はすごく幸せそうだった。まさか自分のせいでサムさんがこんなにもストレスを感じているなんて、本人は何も知らない。彼は満足そうに私へ笑いかけた。
「ざまぁみろだ、このガキ。そのまま騙されているがいいさ」
「カークさん、そんな人と喧嘩する意味、ありません」
「これから、他の人にいい加減な態度を取らないように教えてあげているだけさ。このガキ……ふぅ」
カークさんはエレベーターを待ちながら、私にそう言った。このイケメンは今日、みんなの前で私をお昼ご飯へ誘った。はぁ……間違いなく今日の噂話のターゲットになっちゃったな……。
落ち着いて、みんな。カークさんはサムさんと付き合ってる……ほらね、あの人が来たよ。いつも真顔のサムさんは、今日もストレスで溢れんばかりの笑顔を見せている。
毎日サムさんのことを「邪魔」って言ってくる人を早く見つけたいよね。ここにいるんだよ……サムさんの婚約者なんだよ。ほんと泣きたい……。
「随分笑ってるね。何がそんなにストレスなのかい?」
「なんでモンがここにいるの?」