第二十六章 舐める
サムさんの家に着いた。家族に連絡をしたけど、家に帰らない状態も慣れっこなのか両親はあまり気にしていないらしい。それに、お泊まりする先がサムさんの家だから、安心しているみたい。
ただ今回違うのは、実は娘が初めて付き合った人と、関係が進展してから初のお泊まりってこと。でも、そんなことを二人は知らない。
なんだか顔が熱い。そして、少し悪いことをしているみたい。
「どうしたの? なんでじっとしているのかしら」
冷蔵庫の前でお水を飲みながら、サムさんが声をかけてきた。美しいその人がゆっくりと喋る、その声を聞くだけで訳もなく身体がピクリと反応してしまう。ボスから、彼女に変わったからなのかな。
ちょっと関係が変わっただけで、色んなことが前と違って見えるみたい。
「くだらないことを考えているだけです」
「上に行きましょう」
「はい?」
「早くシャワーを浴びて、寝るわよ」
この家の主は簡単そうに言うけど、私はまた恥ずかしくなってきて、まるで身体がねじれていくような感覚になった。車で話していた通り、本気で私のことを抱きしめながら寝るつもりなんだろうな、なんて想像して。でも今はまだ夕方の六時。
寝るには、あまりにも早すぎる。
全然その場から動こうとしない私を見かねて、サムさんが近寄ってきた。そして、自然に腕を伸ばして私の肩を抱く。
「行こう」
ベッドルームに入ると、サムさんは私をようやく解放してくれた。そして、何もなかったみたいにシャワールームに入って、いつも通りシャワーを浴び始めた。サムさんが出てきた後、私も身体を洗うために入る。前にも言ったけど、私の服がサムさんのクローゼットにいっぱいで、もはや二番目の家みたいになっている。
「あっ!」
「どうしたの? 何かあった?」