第二十八章 お酒の魔法
その人は、吐息がかかるくらいの近さで、私の唇を優しく撫でていた。心臓がずっと高鳴っていて内心パニック状態だけど、リードしている相手の緊張を減らすためにも、なんとも思っていないフリを続けている。こうすれば、お互い不安を感じていてもサムさんが私をまた一歩先へ連れ出してくれるから。
深いキスをした。サムさんの舌がそっと入ってくる。最初の時みたいに私を驚かせないように気を遣ってくれているらしい。そのゆっくりとした動きが逆に色っぽさを醸し出している。一定のリズムを刻んでいて、まるで会話をしている感じ……気持ちが良いね、嬉しい。大丈夫だよ……って。
これ以上何が起きるの……?
驚くべきことに、今、私の奥で何かが掻き立てられて、火をつけられた気分。不安な気持ちは消え去っていて、むしろ彼女にもっと近くへ来てほしい。同時になんだかサムさんが消えてしまいそうな儚さも感じて、自分に引き寄せてみた。
私はもう息も絶え絶えで、眩暈がしそうなほど、心臓が早い。なのに……もう無理。止められない。こんな気持ちって……。
「モン……」
「サムさん……」
甘い顔のその人は唇を他の所へじわじわと動かし始めた。まずは、頬を舐めて。それからゆっくりと耳へと下がっていく。その動きに合わせて、私のつま先に力が入っていって……。
「あっ……」
いつもの自分の声とは全然違う。私からこんな声が……?