第三十三章 友達以上恋人未満
こんなことをするのは初めてじゃない。ただ私達にとって「初めて」をもう一度体験しているような状態だって感じている。今回は、位置と方向が前と違っているけど。
そう、リーダーが変わるの……。
私が美しい人の上半身を包んでいる服を外そうと試みると、組み敷かれているサムさんは抵抗し始めた。でもどうあっても、止める気が無さそうな私を見て、甘い顔のその人は、一旦渋々許してくれたけど、しばらく経つとやっぱり我慢ならなかったらしい。悲痛な叫びと共にお願いをしてきた。
「それは……慣れてない。シャツを脱がないとダメなの?」
「はい。でも、着たままでもいいよ。シャツを脱がない方法でするからね」容姿端麗なその人は表情をパッと嬉しそうに輝かせた。ただ次の言葉を聞くと、すぐに目が丸くさせた。「それじゃあ、他のものを脱ぎましょうか」
「あんたに、できるのかしら?」
「自分だって最初は上手くできなかったってことを、忘れないでください。なにより……サムさんが参考にしていたあの投稿は、私が作ったんだよ?」
もう周りのことを気にしなくなった私は、ややこしくて美しいその人の首を唇で軽く撫でるように舐めていく。それと同時に、手でサムさんのブラジャーのフロントホックを外すと、彼女の素晴らしい胸が現れた。露わになったそれは、私の手が触れるのを今か今かと待っていて。私も何も身につけていない彼女の肌に触れるのは、初めてだから心臓がドクドクと、激しく波打っていることを感じる。
「モ、モン……」
下にいるその人はピクッと身を震わせた。少し触れただけでも、皮膚をざわめかせている様子から、彼女の張り詰めた気持ちが伝わってくる。でもそれは、上で弄んでいる私の昂っていく気持ちほど強くはないらしい。彼女は、身体のコントロールを失いそうになりながらも、慈しむように撫でている私の手と攻防戦を繰り広げている。
「ちょっとは反応して下さい。初めての時、私はちゃんと協力してあげたのに」
「あたし、人前で裸になったことないもん」
「私だって、そうでした。だから、サムさんは私にとって初めての人なんですよ」私は固まっているその人と、目を合わせるために首から離れた。「なのにサムさんは、私に全てを見せてくれないんですか?」
いつもは透き通るような白い肌が、エビと同じくらい真っ赤になった。恥ずかしいのかな、それとも身体が火照っているのかな。どちらでも構わないけど、その表情が堪らなく愛おしい。想いを込めてサムさんをジッと見つめる。
無言だったサムさんの目から承認の意を感じて、少し意地悪な動きを始めた。まずそのお腹に沿って、手をツーッと滑らせ、ゆっくりとなぞった。それから、サムさんが会社でよく着ている黒いスラックスの留め金を外した。触れることに慣れていないサムさんは慌てて、私の手を掴み、唇をきつく結んだ。
「そこを触るの……? 本当にいいの?」