第三十九章 パワー
相手よりも身体が小さいサムさんは、元気が溢れるその人の身体へそっと手を差し伸べて、ぎゅっと抱き締めた。
「なんで、ヌンさんはここにいるんですか?」
「色んな所をウロウロしているんだ。それにしても驚いた! 先、座って」
サムさんは、まだ目を白黒させている私を見た。それから、手を伸ばし、一緒に座ろうと、しゃがみながら私を引っ張った。
「モン……こちらはあたしの姉さんよ。M.L.シパコーン」
「ヌンって呼んで。M.L.なんか、要らない」
嬉しそうにしているその人へ、緊張しながら挨拶をした。うわぁ、こんな所でサムさんのお姉さんに会えるなんて、意外。しかも、少しだらしなさを感じさせる、カジュアルな服装と、お金があまり無さそうに見える表情にも、少し不思議に感じる部分がある。
「ヌンさん、何年も会えていなかったですね。どこにいたのかしら? 全然連絡もしてくれないし」
「世界中へ旅していたよ。お金が無くなったから、タイに戻ってきたの。お金を貯めたら、また遊びに行くんだ……っていうか、ちびっ子。あんたの方こそ、どうしてこんな所に来たの? ここは特に何も無い所なのに。信じられないな」
「羽を伸ばしたくて、ここへ来たの。海外旅行にはもう飽きたし」
「どうやって?」
「運転して」
「うわっ! ちびっ子、よくやったね。おばあ様に無理やり動かされているロボットみたいなお嬢さんだと思っていたわ」そして、ヌンさんは気になっているように、私の方をチラッと見た。「この人、友達?」