第四十章 ダーリン
辞めるって決まると、すぐに辞められる事になった。今まで考えていた計画は全て時間の無駄。まぁ、いい……カークさんにクビにされちゃったから、私は新しい仕事を探すしかない。でも、その新しい仕事が手に入るのもあまりに早すぎた。
「一緒に働こう! 秘書で、給料は二万バーツ以上。面接は必要なし」ティーさんが格好良く、眉を上げた。「コネクションばっかりだよ。誰かが噂話をしたら、無視して」
サムさんは不信感丸出しで、友人へチラッと視線を送った。
「なんでこんな簡単に決めるのかしら? あんた、なんか邪な事でもあるの?」
「なんでそんな深読みするんだろう? 後輩を会社に入れたいだけだよ」
「モンを口説くつもり?」
「口説くなら、ずっと前にやってる」ティーさんは頭を上げて、反抗的に友達を見た。「でも、そんなにビビってるなら、今日から口説こうかな」
「そんなのさせない」本気になりそうなサムさんは腕を組んで、椅子の背もたれのでにもたれかかった。「どこへも働かないで。主婦として家にいさせる事にするわ」
「やれやれ。本当に太っ腹だね。なんでも奢ってくれる人だ」ケードさんは口を曲げて、微笑みながら、肩をすくめた。「何かに嫉妬するなら、境界線を決めた方がいいわ。モンちゃんには、モンちゃんなりの人生があるし。たとえ、モンちゃんがナンパされても、それにノったりしないなら、何も怖がる必要はないの」
「あたし、モンの身体を他人の目に晒す事すら、気に入らない。スキャンされるみたい、キモい」
「ほらほら、誰かが座って、身体をスキャンする暇なんてあると思う?」ジムさんが大きくなったお腹を揺らしながら、怒っていた。
「あれ? みんなはスキャンしないの? モンに初めて会った時、肝臓、腎臓、腸、お腹まで見たよ」
「ヘンタイ!?」ティーさんは手を持ち上げて、腕を組んだ。「友達でも会った時、私達の身体をそんな風に想像してたって事?」