第四十一章 違い
私は背筋をピンとさせて、クッションを膝の上に置くようなフリをした。でも、本当は、下着を着けていないこの胸を隠すため。年齢よりも、見た目がずっと若いサムさんのおばあ様は、一言も喋らない。おそらく、家の雰囲気に浸っているらしい。
「あたしはね。ここへ来たのは初めてだわ」
「あたし」という聞き慣れた言葉は、あの人を思い出させた。頭に浮かんだその人のお陰で、自然と僅かに笑顔が漏れる。サムさんがそう自分のことを呼んでいたのは、多分おばあ様から影響を受けているんだろうな。
「あなたはよく来ているの?」
「は、はい……」
「うーん……」おばあ様は喉元で小さく返事をした。そして、水を一口飲む。「上手くやったわね。サムの世界に入り込むなんて」
なんと返していいか分からない。サムさんとお姉さん達から聞いたおばあ様の話は、いつも威張っていて、メイドのことを奴隷と呼んでいる、って聞いていたのに。そんな人だから、サムさんは自分らしくいられなくなって、言葉と心が一致しない人になったって……。でもこうして本人に会ってみると、意外にも話しやすい人のように思える。
「あんたをモンって呼んでもいいわよね?」