第四十五章 ヒロイン
私はよく考えた人として、そう伝えた。それを聞いた相手は辛いだろうって思うけど、心に愛が溢れたままでそう言った人はもっと辛いんだよ。
サムさんはその言葉を聞いて、頭をハンマーで殴られた人みたいに手を震わせて、驚愕していた。どうやら、私がそんなこと言えるなんて信じられないみたい。
「今、あたしに別れるって言った?」
その動揺したか細い声を聞いて、私の心は揺れて、すぐにでも相手の胸に飛び込んで抱きしめたかった。だけど、頑張って自分のその気持ちを押し殺した。そして、戻れないように言い放つ。
「もう行き止まりです。サムさん、受け入れてください」
「嫌だ」サムさんはただ頭を振るばかり。「どうして、あたしを信じてくれないのかしら。この結婚はただおばあ様の願いを叶えるだけ。どうせあたしとカークは、そんな関係を結ばないわ」
「サムさん、もう目を覚まさないと! これはドラマじゃなくて、現実です。サムさんはカークさんと同じ部屋で眠るんです。それで何もしないなんて、あり得ません。私が辛くないって思っているの? わたしが……別れましょうって言ったとき、なんとも感じていないって、そう思っているんですか?」
「じゃあ、なんで別れるなんて言うのかしら!?」