第二章
青虫
ピランティタという女の子の一日の過ごし方は至極単純なものである。
平日は早朝に起き、入浴や支度を済ませるところから始まる。腰にまで届きそうな長い髪を綺麗に束ねた後は、居間へ降りていき、ゴイが用意した朝食を食べる。朝食のほとんどがおじやあるいは、お粥と、簡単な野菜の炒め物や豚肉、魚の揚げ物だったりすることもある。
レディ・ピンとアニン王女は通う学問所が同じだった為、当初、太子様は自分の豪華な車に、レディ・ピンとアニン王女を一緒に乗せて通学させるつもりだった。その学問所は、王宮の中にあり、王族の血縁に当たるご子息だけが通えるところだ。しかし、叔母のパッタミカ王女は、ピンよりも上のアニン王女様と同じ施しを受けるのは正しくないと判断し、太子様のご提案を断って、レディ・ピンには代わりに自身の宮殿、蓮宮にある古臭い唯一のセダンで「チャオケー*」と呼んでいる車を使用させるよう、運転手のプァームに命じたのだった。
しかし……アニン王女は宮殿の門の外で幾度となくレディ・ピンが乗るチャオケーを待ち伏せし、車に乗り込んで、ピンと何度も一緒に通学されている事を叔母様はご存じないのだった。
『アニン王女様、大変恐縮なのですが、なぜこちらの車にご乗車されるのでしょうか。家来のプライおじさんはどこへ向かったのでしょうか?』