第七章
踊る人形
アノン王子の宴会の準備は、ご本人が帰国される数週間前から始まっていた。第二王子は自国を離れ、何年もかけて法律を学ばれていた為、太子様はこの宴会をより大きなものにしようとご高察されていらっしゃるからである。
その宴会の準備を取り仕切るのは、王族のご親戚にあたり、後宮で王や王妃に仕えた事がある面々だ。それには、もちろんパッタミカ王女も含まれ、今回は御所菓子の献立を全て管理されている。
準備は着々と予定通りに進んでいる。宴会にお越しいただくご来賓の方々の献立は、パッタミカ王女から使う調味料の比率などの厳しい管理や指示が全てに入り、最終的にはアリサー王妃の試食によって選定される。
宴会の段取りは順調に進んで……先週末は、アリサー王妃に味見をして頂くため、パッタミカ王女が使用人を取りまとめ、全ての献立の味や盛り付けを朝から晩まで繰り返し行い、ちょっとした高揚感が台盤所を包んでいた。
沢山の人が忙しさと楽しさを感じる日々であった。
物事に本気で取り組めば、その成果を何らかの形で受け取る人がいるものだ。
その中でも、アニン王女とプリックは、その努力の成果を受けるべき者として、パッタミカ王女からも異論なく認められている。
それは、アニン王女とその一味がその立場に浸り、満喫していると言っても過言ではない。
満足するな、と言われても無理だ。なぜなら、彼女ら一行は、パッタミカ王女に試食して頂くために午前中に使用人たちが用意した昼食をつまみ食いし、それでも飽き足らず、午後にも台盤所へと足を運び、用意された献立を食べ放題のように自分らも試食しに来るのだ。
今日という日までの一週間、二人は宮殿への帰り方を忘れたのかと思わせるほど、台盤所へと無限に通った
お昼と呼ぶにはいささか遅すぎる、といった頃合いに、太子様と王妃様、加えてアナンタウット王子がアノン王子をお迎えに上がられるも、アニン王女は学問所から帰宅されたばかりということもあり、衣装を着替え宮殿でお帰りを待たれることになった。
だが、しかし……。