特別編
第一章 風車
第一話
あの日の、確か遅い午後だった……私は立ち尽くしながら、天高く聳える煙突から嫌味のように立ち込める灰色の煙を見つめ、どこからともなく湧き出てくる涙を同じように静かに流し続けていた。そんな私の目の前には、見知らぬ顔の大人たちがあれやこれやと蟻の群れのように動き回っていた。そんな止まった時間の流れの中で私が少しでも感じれたものは、叔母様が私にしてくれた抱擁の暖かさだけであった……。
叔母様は私に、私は独りでは戦っている訳ではない、常にそばに居てくれている、ということを感じさせてくれた。お父様の妹君は、孤児になってしまった私に嫌な顔一つ見せず、すんなりと、そして真剣に、私の親になると引き取ってくれた。
しかし、何の前触れもなく私の大切な人を奪っていったあの忌まわしき事故から生まれた心の穴をは残り続けるままだった。何が起きようとも、その穴を埋めてくれることはなかった。