特別編
第一章 風車
第四話
あまりにも恥ずかしい話である。アニンに警告とも取れる注意をあれだけしたのにも関わらず、数日もせず、アニンは『懲りず』に大小構わず木登りを続けていた。いずれかの木々が太子様のお気に入りなのだと耳にすると、アニン王女はすぐに偵察という名目で太子様のお好きな木々を登ることをやめなかった。
アニンのこのやんちゃぶりは別に不思議な事ではない。
私が今後一切気にしないと口にしたのに、アニンに対してそれほど効果が無かったことの方が……。
……いや、アニンが大樹から落ちて怪我を負ってしまうのを何度も見てしまうと、私の方が耐えられなくなる。
「今回はかなりの怪我ですわね」私は不機嫌であることを全面に押し出す。「こんなにも血が出てしまってるじゃない」