特別編
第三章 戀文
第一話
授業が始まる前の朝休み、アニンはあそこにいることが多い……例によって、多目的広場の隅で目立つように立っていた。そう、沢山の人混みの中心部を、夜闇を払う朝焼けの日の出の如く当然のように佇んでいる。私の視線は、どんなに遮蔽物があろうとも、アニンの姿しか捉えることが出来なかった。彼女ばかりを依怙贔屓してしまうこの気持ちは、普通という言葉とは大きくかけ離れていることは自分でも痛いほど分かっている。でも、私はそうなってしまう理由を考えようとはしなかった。
……何で私の目ははこんなにもアニンの姿しか見ようとしないのか。
「アニン王女はほんっとうに可愛いお方よね、ピン」高身長で目立つアニンのそんな姿をボーっと眺めていると、突然、御令嬢である学友のウィライポーンがそんなことを耳元で呟いてきた。「宮殿へお戻りになられたときの普段着を召されたお姿もとっても可愛いんでしょう」