特別編
第五章 二度目の夜
第四話
「私は……アニンがどうやって叔母様を説得したのかが知りたいですわ。私が松宮殿にお泊りをする許可を頂くのに、どのように話をされたのですか」
私は今、松宮のアニンの寝室で夜を過ごしている。ふと気になったことだったが、知りたいと思う気持ちが強くあり、そのまま口に出して尋ねた。
「私はただ、叔母様に真っすぐ尋ねただけよ」微笑むアニン。「アニンが最近恐ろしい夢を見ることが多いから、一人で夜を明かすのは心細い、とこんな風に伝えたの」
「ふっ……」アニンの真意を悟った私は冷笑が出てしまう。
「うーん」彼女は気づいていないよという振りを貫こうとしている。
「アニンは本当にしょうがないんだから」私は少々不満を感じるも、神の賜物であろうアニンの顔にかかる髪を手が一人でに動いて払いのけた。
「じゃあ、ピンさんはどうして分かるの。私が夢を見てないって」アニンは愛くるしい笑顔を向けてくる。「ピンさんは知らないの。アニンは毎晩、悪夢を見ているんだからね」
「はい」私も釣られて微笑んでしまう。「そうよね、悪夢よね……アニンの話を信じるわ」
私がそう言ったのを聞いたアニンは満足そうな笑顔を浮かべると、ゆっくりと私の方へと身体を寄せ、私のことをギュッと抱きしめてきた。その後、アニンは私の額と肩を柔らかい手つきで触れてきた。これはアニンが私に甘えるときによくする行動である。
「だって、アニンは本当に悪夢を見たんですもの」アニンはそう言った後、私の肩にキスをしてきた。「雨が降っているテラスでピンさんを待ち続けていたけど、ピンさんが全く来てくれる気配がない夢で……」
「……私自身も今の今まであの日のことをずっと悔やんでいるわ」私は自分の手で彼女の腕を優しく撫でおろす。「私のことを許してくれませんか、アニン」